漁村の活動応援サイト
vol.3
2021.9.27

いつまでもこの地域で暮らしたい。
みんなの笑顔を創り出す老稚園「いいとこ」の活動

(長崎県対馬市 上対馬地区)

地区の概要

対馬周辺地図

対馬は、玄界灘に浮かぶ離島で、朝鮮半島からわずか50キロの距離に位置している。古くから大陸との貿易が盛んに行われ、大陸由来の文化財が数多く残っている。近年は韓国からの観光客が急増し、対馬全体の観光客の約75%を占めるほどになっていたが、日韓関係の悪化や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う移動規制の影響で韓国人観光客は激減しており、日本人客の誘致への転換が図られつつある。

対馬市の人口は28,511人、世帯数は12,684世帯(2020年国勢調査)。高齢化率は約39%(2020年)となっている。

地区漁業の概要

対馬市の第一次産業従事者は全体の約20%であり、第一次産業のうち漁業従事者は78%を占めている(2015年国勢調査)。漁業センサス(2018)によると、漁業就業者数は2,285名、経営体数は1,274経営体となっている。主な漁業としては、イカ釣り漁業、一本釣りや延縄、定置網といった海面漁業と、クロマグロや真珠などの海面養殖が営まれている。国境に位置するために、外国漁船や、国内の大中旋網・沖合底引き網などとの漁場競合の問題を抱えている。水産物の水揚量は約17,434トン(2013年)となっており、魚類やイカの水揚が多くなっている。

対馬のお魚

老稚園「いいとこ」の活動

上対馬地区で飲食店を営む辻清美さんは、2015年に老稚園「いいとこ」を立ち上げた。老稚園とは、地域の年配者が気軽に集まって楽しく過ごせるサロン活動だ。年配者のための生きがいや居心地よい場づくりを目的として、活動を続けている。

みんなで体操(2016年)
おやつの時間(2016年)

2020年3月、老稚園の活動のその後を伺うために再訪した。老稚園活動は、これまでも地元の整体師や地域おこし協力隊員の大学生など、様々な人の協力によって維持されてきた。現在も7名ほどのボランティアメンバーが協力している。最近ではサロンの参加者がちょっとした買い物ができるように、野菜や果物、お菓子などを仕入れ当日販売するようなことも始めている。しかし、老稚園設立当初から参加していた人たちの中には、認知症が進み活動に来られなくなったり、支えるスタッフも年を重ねてきていること、補助金ももらわず自前での活動であることなどの課題もある。認知症が進むと島外に住んでいる子供たちが呼び寄せて、島を離れる年配者もいるという。最近では老稚園の活動は隔週開催となっている。

開催日にはのぼりを立てて
イリオモテヤマネコ
(対馬野生生物保護センター)
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