漁村の活動応援サイト
vol.7
2020.9.18

フォロワー1万人超え!生き物大好きな彼女のSNS発信現場に密着。中西商店 中西 沙綾さん

「本日の朝どれ天然シマアジ2.4キロ!! かっこいい顔で高級魚です。」

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そんな文章とともにSNS上で紹介されている新鮮な活魚の写真は、どれも表情豊かでイキイキとしています。普段は見ることのできない珍しい魚の姿も。そんな投稿を見たフォロワーからは、「高級魚ばかりですね。美味しそう!」、「先日いただいたタコ、美味しかったです。」といったコメントやいいね!で溢れていました。

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また、写真の中には小魚を頬張る猫に、そして大きな魚を片手に写る中西沙綾さん(以下、沙綾さん)の姿がありました。SNSで紹介されている魚たちの写真は、家族経営している魚問屋 中西商店にて沙綾さんが撮影しています。

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三重県度会郡南伊勢町は、まき網などの漁が盛んな地域。日本有数の水揚げ量を誇っています。

中西商店では南伊勢町で水揚げされた新鮮な魚を、伊勢神宮で有名な伊勢市までその日のうちに配達。魚が美味しいと評判のお店からも高い信頼も得ています。現在、三重県内外で取引のある飲食店や小売店は約21件あり、市場への卸もしています。

実は約5年前まで、中西商店の取引のほとんどは市場卸でした。沙綾さんが家業を手伝うことになってから、飲食店や小売店との取引が増えていき、現在に至っています。本記事では、そんな南伊勢町で活躍する中西沙綾さんを取材し、美味しい魚を届けている現場やSNSでの情報発信の裏側をご紹介します。

入札・加工・配達まで 中西商店の1日

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時刻は午前8時、南伊勢町の贄浦漁港では水揚げされた魚の入札が行われていました。競り人のまわりに集まっている入札者たちの中に、沙綾さんの父親 中西貞文さん(以下、貞文さん)の姿がありました。

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中西商店で仕入れる魚の入札は、貞文さんのお仕事。入札者たちはその日に水揚げされた魚を確認して、木札に値段を書き込み競り人に見せて、テンポよく魚を落としていきます。

中西商店では贄浦漁港とお隣の奈屋浦漁港で活魚をメインに入札して、その日の水揚げ状況に応じて野締めの魚も仕入れています。

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飲食店さんへの連絡など、親子で柔軟に連携します。
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活魚は専用の軽トラックに積み込みます。

場所を変えて、ここは車で贄浦漁港からは7分、奈屋浦漁港から11分の中西商店加工場です。入札で落とした魚はここに運ばれ、血抜きや神経抜き、販売先との調整や出荷作業が行われます。

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大量の生きた魚を運び、加工して出荷する作業はとても大変です。貞文さんや沙綾さんをはじめ、従業員総出で慌ただしく建物内を動き回ります。飲食店に電話をかける貞文さん、箱に魚を詰め込む従業員さん、沙綾さんは状況に応じて手の必要なところの作業に取り掛かります。

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そして、そんな慌ただしい作業の合間を見計らって沙綾さんはスマートフォンを右手に、魚を左手に持って写真を素早く撮影します。

沙綾さん 「早く撮影しないと、お父さんが魚を締めてしまうんです。」

撮影された魚の写真はSNSで紹介する以外にも、必要に応じてLINEで飲食店さんにも共有。発送予定の便に載せる追加の魚の注文を受け付けます。

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小さな活魚も丁寧に神経抜きするのは中西商店の特徴です。

時刻はちょうど正午を迎えた頃、中西商店ロゴの冷蔵運送車が箱詰めされた魚を積み込んで走り出します。目的地は伊勢市のスーパーや飲食店です。

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朝どれのお魚をスーパーにお届け。
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スーパーのお次は飲食店さんを順番に巡っていきます。

そして、中西商店が届けた南伊勢町の魚は飲食店やご自宅で美味しい料理となります。

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料理居酒屋 いっしんの刺盛り 【沙綾さん提供】

——『中西さんところは魚の状態もよくて、細かな注文にも丁寧に対応してくれます。』

とたまたま取材時に中西商店を訪れていた、株式会社 食一の田中社長。沙綾さんたちに対して、とても信頼を寄せていました。

魚屋の長女として生まれ育ち、
一度は南伊勢町を離れていた沙綾さん。

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中西商店の長女として生まれた沙綾さん。子どもの頃はとにかく南伊勢町から出たかった、と当時を振り返ります。高校進学を機に南伊勢町を離れ、母親の体調不良をきっかけに家業を手伝うことになったのは27歳のとき。それまでは、魚を捌いたり、神経締めをすることとは全くの無縁だったというから驚きです。

沙綾さんが小学生の頃、中西商店ではお刺身や惣菜を販売するお店をしていました。忙しいと内線電話で母親から呼び出されたそうです。

沙綾さん 「お刺身のラベルを貼る手伝いをしてました。ツバスは何円でカツオは何円って。お父さんが魚の頭落としたり三枚におろす姿とか、その時のことをよく覚えています。」

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家業を手伝うにようになり、子どもの頃の記憶が蘇ってきます。今では沙綾さん自身で魚を捌いたり、神経抜きをするのもお手の物です。

沙綾さん 「最初の頃は、サバの首を折れなかった。今では早く折ってあげたいと思うようになりました。」

そのように話す理由は、仕事に慣れて鮮度を保つことに加えて、沙綾さんが子どもの頃から持ち続けている感情からでした。

生き物が大好きなんです。

沙綾さん 「首を切って締めただけの魚は神経を抜かないと暴れますよね。小さい魚は神経を抜くのが面倒ですが、バタバタ暴れている様子はとても苦しそうで。」

きっかけはそんな気持ちで、小さな魚も神経抜きをするようになったと話す沙綾さん。

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美味しさを保つため、新聞紙を魚の上に敷いてから氷を箱に詰め込みます。

魚に対してどうしてあげるのが一番良いのかを考えた結果、小さな魚も丁寧に処理することが中西商店のスタイルとして定着し、美味しさを保つことにも繋がっていきました。

沙綾さん 「もちろん、食べることも好きです。でも、私は生き物は飼うことのほうが好きなんです。」

ご自宅では猫を2匹飼っていて、メダカの繁殖もされています。中西商店の加工場まわりには、ベーくんやジャーマンという野良猫も。

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野良猫のベーくん
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べーくんのごはんの様子 【沙綾さん提供】

また、沙綾さんは漁港に珍しい魚が水揚げされると写真を撮影して、すぐに友人の専門家に聞きます。数日前も水族館に遊びに行ったばかりで、生き物への興味関心は尽きません。

沙綾さん 「写真を撮るのも好きです。撮ったからには誰かに見てもらいたいじゃないですか。」

そこで、沙綾さんは日々の仕事の中で、南伊勢町の種類豊富な魚を紹介しはじめました。そうすると、どんどんファンも増えていき、今では Facebook と Instagram のフォロワーと友達になれていないフォロワーを含めて、約11,500人。管理は追いついていなくて携帯も海水まみれです、と笑います。

魚を撮影しはじめた最初の頃は、「はよ、手伝え。」と言っていた貞文さん。今では沙綾さんのSNS投稿にいいね!を押してくれていているそうです。

沙綾さん 「魚をただ紹介するだけなら、他の人もしています。普通のことをしていても仕方がないかなって。」

その考えの元、撮影された猫や日常のワンシーン、ご自分自身と魚、表情豊かな魚たち。SNSで投稿されている写真には、沙綾さんのそんな豊かな感性がつまっていました。

人手不足に工場の老朽化 課題は山積み。

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そんな沙綾さんでも毎日の情報発信に加えて、SNS上での注文受付は大変です。その対策として、直送便注文の窓口を一本化を目指して、現在、オンラインショップを中西商店公式WEBページに構築されています。

また取材時、実は沙綾さんのお腹の中には新しい命を宿していました。お相手は三重県鳥羽市石鏡町で釣り船屋をされていて、現在は車で約1時間かけて鳥羽市から南伊勢町に通っています。そのため、以前のように飲食店への配達や大きな魚を運ぶことは控えていました。

沙綾さん 「うちはお父さんの代で終わりかなって、結婚する前は話してました。後10年は大丈夫ですけど、これからどうしていくかは旦那次第ですね。」

人手不足や建物の老朽化など、頭を悩ませる課題は山積み。中西商店のこれからを沙綾さんはご家族と考えながらも、新鮮な魚を私たちに届けてくれていました。

あなたの町には、美味しいお刺身で評判のお店はありますか?その美味しさの訳をさかのぼってみると、沙綾さんたちのような漁村で活躍している人にきっと行き着きます。

海産 有限会社 中西商店

住所
〒516-1301 三重県度会郡南伊勢町道方1291-22
WEB
https://nakanishishouten.com/
Facebook
https://www.facebook.com/saaya.nakanishi
(中西沙綾さんのFacebook)
Instagram
https://www.instagram.com/saaya.teramoto/
(中西沙綾さんのInstagram)

取材・文

濱地雄一朗 | Yuichiro.Hamaji

三重県で活動する地域ライター。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごしています。専門は物産と観光、アクティビティ体験など。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。

三重県お土産観光ナビ
https://mie-hamaji.com

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