漁村の活動応援サイト
vol.7
2020.11.27

また行きたくなる朝市には、惹かれ合う土地と人あり。あらしま新鮮組出間 リカさん鈴木 みゆきさん

ここは三重県鳥羽市安楽島町にある漁協の敷地。

普段は人の気配のない場所も毎月第2、第4日曜日に大変な賑わいをみせます。

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活きた伊勢海老
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獲れたて新鮮な魚介たち

今年で9周年を迎えた「あらしま朝市」。開始前から人々はお目当ての品を手に入れるため、お店の前に長い列を作ります。そして時計の針が8時を指したと同時に「あらしま朝市」開始!鳥羽市出身の演歌歌手鳥羽一郎さんの歌声が会場に響きました。

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一斉に動き出した長蛇の列。約20分後、またたく間に販売していた商品は売り切れ状態になってしまいました。

—「やっぱり間に合わんだ。まぁしゃーないわな。」

と遅れて到着したお客さんがつぶやきます。すると、そのままお店の方と楽しげに談笑を始めました。あたりでは各お店でも同じような光景が広がっていました。和やかな雰囲気の中、お客さんもお店の人も和気あいあいとしています。

「あらしま朝市」のジェットコースターのような激しい変化に僕は驚きながらも、とても晴れやかな気持ちになっていました。何だか訪れるだけで元気をもらえる朝市です。

そんな「あらしま朝市」を仕掛けているグループが安楽島町の「あらしま新鮮組」さん。とても元気で楽しい「あらしま新鮮組」さんのパワーの秘訣は一体何なのでしょうか?「あらしま新鮮組」の出間リカさん(以下、出間さん)と鈴木みゆきさん(鈴木さん)にお話を伺ってきました。

あらしま新鮮組 代表 出間リカさん

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安楽島牡蠣と茎わかめの浜煮を作る出間さん。ご自宅の加工場にて。

自分たちで獲ったものは自分たちで売る、それが安楽島地域での昔からの慣習でした。今でこそ漁協への出荷もありますが、以前は安楽島で水揚げされた海産物は漁業者自身が仲卸業者や宿泊施設と直接取引。そして、漁協には売上の数%を支払うという仕組みです。

もっと安楽島の海産物をお客様に届けられる方法はないのかな?そう考えていた出間さん。

出間さん「他の地域で先に朝市を始めとってね。安楽島婦人会の場で私らもやってみいひん?って声をかけてみたんさ。」

すると、私もやってみたかったんさと一人、また一人と意気投合。そこから一気に安楽島町での朝市を実現するため、出間さんたちは調査・奮闘します。いつどこで朝市を開催するのか?どんな許可が必要なのか?、ひとつひとつの課題を解決していきました。

そして2011年9月25日(日)に第1回「あらしま朝市」の開催が決定します。

出間さん「当時は今みたいにSNSも使いこなせへんくて、毎月第2第4日曜 あらしま朝市開催!のチラシを100枚くらい町内会でコピーさせてもらってな。お願いしますって、地元のスーパーや旅館やホテルを何十箇所も回ったよ。」

第1回目の来場者は約50人。現在の半分以下くらいで、これからやっていけるのだろうかと不安もあったそうです。それでも、だんだんと浸透していくはずと毎月2回の開催を続けられてきました。

出間さん「安楽島で獲れたええもんをお値打ちで売っとる自信はあったから。」

1年目、そして2年目。「あらしま朝市」を続けていくことで、回を重ねるごとに出間さんたちの努力は実を結んでいきます。口コミや身につけたSNSでの発信、メディアにも多数取り上げられ、現在の盛況な「あらしま朝市」となっていきました。

「あらしま朝市」をはじめたことで様々なチャンスも巡ってきます。例えば、他の地域での朝市やイベントへの出店。「あらしま朝市」で身につけた販売ノウハウを活かして、販路も広がりました。また、「あらしま朝市」へ出店する新たな仲間も加わっていきました。

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毎月第4週日曜日のみ出店のパン屋「麦の穂」さん
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鳥羽市安楽島産の自家製うこんも朝市で販売されています。

「あらしま朝市」の目玉といえば、獲れたてのお魚です。

出間さん「あらしま朝市は、父ちゃんらの協力があってこそなんさ。私ら女だけでは絶対にできへんでな。」

新鮮なお魚は「あらしま朝市」の開催に合わせて、安楽島の漁師さんが前日に釣りや網などで獲ってきたもの。出間さんは現役の海女さんで、シーズン時にはサザエやアワビ漁で海に潜ります。出間さんの旦那さんは、野菜づくりや海藻を獲る担当。お互いに連携しながら加工・販売する、夫婦のパワーが「あらしま朝市」を支えていました。

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出間さんは2015年には安楽島産牡蠣を使った商品開発にも挑戦。あらしま朝市で人気の商品です。
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全部で3種類。どれも安楽島牡蠣を存分に味わえます。

出間さん「安楽島はサラリーマンしながら、漁業や農業しとる人が昔から多い。両親もそうで、私は親の影響を受けとるかな。」

これまで海産問屋や牡蠣屋、海産物の運送屋など、常に海に関わる仕事をされてきた出間さん。そうして自然とたどり着いたのは、ご両親のような働き方でした。

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あらしま朝市でも活躍する販売車に気になる「とばぁば」の文字

そんな出間さんの「何でもやってみよう。」という挑戦スタイルは、2015年に思いもよらぬ展開を迎えます。ご当地アイドルユニット「現役海女戦士 とばぁば」の誕生です。

漁協の事務員さんに「現役海女さんに、こんな案内がきとるよ。」とご当地アイドル募集のチラシを受け取った出間さん。歌うことも踊ることも好きやし面白そう、そんな軽い気持ちで応募した結果 …

出間さん「アイドルとしてデビューしたね。めちゃめちゃ大変やったけど、楽しかった。ええ経験をさせてもらったわ。」

いつもご当地アイドルに会える朝市は、全国を探しても「あらしま朝市」だけかもしれません。そんな「とばぁば」 の名で愛される出間さんともう一人の相方は、同じ「あらしま新鮮組」の海女さんでした。

あらしま新鮮組 鈴木みゆきさん

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もう一人のとばぁば 鈴木みゆきさん。鈴木水産の牡蠣加工場にて。
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毎年10月〜3月頃は、あらしま朝市で安楽島産養殖牡蠣を販売しています。

鈴木さん「リカちゃん(出間さん)とは年は違えど、考えとることは近くって。」

出間さんとは別の時間帯に漁協を訪れた鈴木さん。事務員さんからご当地アイドル募集チラシを受け取り、歌うことも踊ることも好きやし面白そう、と応募。あらしま新鮮組の2人が「とばぁば」としてデビューされたのは偶然の産物でした。

元々は現役海女さん5人組でデビューする予定だったというのはご当地アイドルプロジェクトの裏話。しかし、現役海女さんで自薦の方のみという応募要件はとてもハードルが高かったようです。応募したのは出間さんと鈴木さんの2人のみでした。

2015年8月にオーディションを無事合格した後、2人を待ち受けていたのはアイドルデビューの洗礼ともいえる「鬼スケジュール」。

鈴木さん「9月にレコーディング、10月にプロモーションビデオ撮影で12月にメジャーデビュー。必死で渡された歌や振り付けを覚えたで。思い返すと、リカちゃん(出間さん)と2人で本当によかった。」

仕事終わりに地元公民館を借りて練習を重ねる日々。身近で気の合う2人だったからこそ、練習ができたと笑う鈴木さん。マネージャーには、「あらしま朝市」の開催日だけはスケジュールを入れないでほしいと伝えていたそうです。

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鈴木さん「このTシャツを着とると、よく地元のお客さんにも声をかけてもらえるんさ。」

あらしま朝市で広がった出会いの数々。鈴木さんにとって大切な宝物です。

鈴木さん「料理屋さんは遠くても安楽島まで足を運んでくれる人も多いな。前もって電話くれたら、朝市でお渡しできるように準備もしとくんさ。」

「あらしま新鮮組」の名前は実は鈴木さんが名付け親で、その理由は安楽島の新鮮なものを売るから。トレードマークは安楽島名物のタコです。鈴木さんの鈴木水産でもタコ漁をされていて、「あらしま朝市」では販売された時は即完売する大人気の商品です。

新たな取組紹介 離れていても身近に漁師さん
「あらしま海の直送便」サービス

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2020年4月・5月は新型コロナウイルスの影響によって、「あらしま朝市」は約2ヶ月間の開催を自粛しました。

そんな2ヶ月の間に「あらしま新鮮組」さんから新たなサービスが生まれました。その名も「あらしま海の直送便」です。

「あらしま海の直送便」とは、安楽島町の海女さんや漁師さんから新鮮な海の幸が届くサービス。毎日の何が獲れるか、釣れるかわからないのが海の漁。新鮮な魚介が水揚げされた時に、事前に予約されたお客様に直送されます。

サービスのきっかけは3月、4月頃に釣れた大量のサワラ。毎日毎日、大量!という嬉しい悲鳴の一方で「あらしま朝市」も自粛中。売り先に困ってしまいました。

出間さん「たまたま Facebook でサワラを買ってくれませんか?とつぶやいたら、一気に15人くらい買ってくれたの。」

すると、サワラを購入した「あらしま朝市」の常連さんから

— 漁師さんや海女さんから直接、こんなの獲れたからどう?と聞いてもらえて送ってもらえるってすごく嬉しいもんですよ。

とアドバイスをいただいたそうです。

出間さん「みゆきさん(鈴木さん)やしんちゃんに話したら、それええね!って。」

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「あらしま新鮮組」を支える縁の下の力持ち マルサ商店 佐藤慎也さん(しんちゃん)。

お客様とのやりとりは出間さん、POPなどの広報物制作は佐藤さん、配送は鈴木さんが担当することになります。そうして2020年6月、「あらしま朝市」の再開と同時にはじまった「あらしま海の直送便」。多数のメディアにも紹介され高い注目を浴びます。特に7月分は予定していた30セットを大幅に上回る注文が殺到しました。

出間さん「80セットも注文あったんさ。何日までには送れると思いますって、ひとりひとり連絡したよ。何とか7月中に全部発送できてほっとした。」

出間さんと鈴木さんの共通点
ずっと変わらない安楽島への郷土愛

鈴木さん「私らは生まれてから今まで安楽島におって、やっぱり大好きやでな。」

出間さん「安楽島の海が見えてくると、あぁ帰ってきたなぁて安心するんさ。」

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安楽島入り口から見える海の光景

2人は生まれてから現在まで、人生を安楽島で過ごされてきました。「とばぁば」としての地元PR活動など、様々な場所に訪れる度に、安楽島シックになってしまったといいます。あらしま新鮮組さんをはじめ、安楽島で生活されている方々は、きっと出間さんや鈴木さんと同じ体験をされているのかもしれません。

鳥羽の中心地まで車で5分程度、日本の原風景が残る安楽島。どこか人を惹き寄せる魅力で溢れています。「あらしま朝市」に訪れるお客様もそんな安楽島の土地にも魅せられていそうです。

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安楽島の海と漁船。日常の風景。
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安楽島町の伊射波神社。地元民は親しみを込めて「かぶらこさん」と呼びます。

「あらしま朝市」も終わり、片付けを終えたあらしま新鮮組さんたち。最後に出間さんのトラックが安楽島漁協の敷地を後にされました。

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つい先程までの光景が嘘のようにスッキリとした光景が広がっています。何もなくて寂しいなと感じるよりも、キラキラしているような目には見えない朝市の名残を感じました。

出間さん「朝市では私らも楽しくやろうって。私らが楽しかったらお客さんも楽しなってもらえる。それが一番やと思ってます。」

安楽島のことが大好きで楽しい「あらしま新鮮組」さんたちに会えること。

早起きしてでも「あらしま朝市」にまた行きたくなる、その理由を僕は見つけました。

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あらしま新鮮組


Facebook
https://www.facebook.com/arashimashinsen
LINE
あらしま海の直送便公式LINE
@447ktwmrs
問合せ
090-7950-4425(出間)

あらしま朝市


開催日
第2・第4日曜日 8:00〜10:00(雨天決行)
開催場所
鳥羽市安楽島町661-4 安楽島地区の漁協前

取材・文

濱地雄一朗 | Yuichiro.Hamaji

三重県で活動する地域ライター。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごしています。専門は物産と観光、アクティビティ体験など。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。

三重県お土産観光ナビ
https://mie-hamaji.com

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