自社ブランドで突き抜けて、業界を底上げ
毎朝、目の前の海から直接、ベルトコンベアを使って大量の牡蠣を水揚げ。敷地内には、牡蠣うち(牡蠣の殻をむく作業)などを行う作業場とかき小屋、お土産用の直売所など、すべての設備が揃い、お客さんは、生産現場の豪快な雰囲気を楽しみながら、とれたての牡蠣をほうばることができます。籠に入った殻付き牡蠣が、セルフサービスで食べ放題。他にも牡蠣料理が充実するとあって、国内のみならず海外からもリピーターが絶えません。
仕掛け人は、前社長の島田俊介さん(現・会長)。約15年前、広島県内ではおそらく初となる牡蠣小屋をスタート、その思いは「島田水産をブランドにする!」というものでした。
17歳で歴史ある老舗を継ぎ、血気盛んな30代では組合でブランド牡蠣の立ち上げに奔走。しかしこの時「みんなで一緒にやる」ということの難しさを痛感。すべて自分でやって、自分で責任をとる方がいい、そんな境地に至ったと話します。
「それからは直接、消費者と話をしようと思い、お客さんに食べてみたい、見てみたい、と言われたことを形にしていきました。それが、かき小屋や観光ツアーを始めるきっかけになったんです。また、牡蠣は生産者が作っているのだから、生産者が伝えないと!と、マスコミの取材にも積極的に応えるようにしていきました」(島田俊介さん)
自社の名前をブランドにして突き抜ける。ひいてはそれが、広島の牡蠣を有名にし、業界全体の底上げにつながると島田会長。
その思いに誰よりも応えてくれたのがお客さんたちでした。実際に来た人たちがSNSなどで拡散、クチコミがクチコミを呼び、今の人気につながっています。
新しいことをやれる社風、やりがいも大きい
アルバイトやパートを含め、従業員は約30名。「コロナ禍では大赤字」と苦心しつつも、雇用を守ってきたという島田水産。広島でも後継者不足に悩む事業者が多い中、こちらでは、若い人の姿が目立ちます。
正社員のひとり、三宅將(まさる)さんは、会長の息子で、現在は社長を務める泰昌さんの幼馴染。県外に出て飲食業界などを経験した後、地元に戻って島田水産に入社。10代の頃にアルバイトをしていたこともあって信頼が厚く、かき小屋の店長に抜擢されました。
始めの頃はお客さんが1日に10人も来ればよい方。養殖や加工などかき小屋以外にもやることが山積みで、休みの日に旅行会社へ営業に行くなど、苦労もあったと話します。
「それでも、やってみたいと思うことは、前例がなくても『やってみろ!』と応援してくれる社風。新しいことに挑戦するのは面白いし、やりがいもある。しんどくても続けたいと思えた理由ですね」と三宅さん。
しかし、島田水産の本業はあくまでも生産。海のことをしっかりとおさえたうえでなければ、飲食や観光業に着手しても意味がないと話します。
「自然が相手なので悪い時だってあるし、生産者の牡蠣だから新鮮で当然とハードルは高い。でもその上で、本当においしい牡蠣を提供するからこそ、お客さんが納得してついてきてくれるんだと思います」
生産者ならではのサービスを惜しみなく実現してきた島田水産。コロナ禍での苦労はありましたが、国内外でのファンを今なお着々と増やし続けています。
島田水産かき小屋
- 所在地
- 広島県廿日市市宮島口西1丁目2-6
- TEL
- 0829-30-6356
- 営業時間
- 10:00〜17:00 (平日) / 10:00~20:30 (土日祝)
- 定休日
- 不定休