漁村の活動応援サイト
vol.49
2022.10.25

魚食に魅了された糀マイスター、
首都圏在住3児のワーママが期待する日本の魚食
発酵料理家 コージーキッチン主宰 高木 佐知子 さん

首都圏のベッドタウンでもある千葉県流山市に住み、発酵料理家として活躍する高木佐知子さん(コージーキッチン主宰)。2017年のJF全国女性連フレッシュ・ミズ部会で講師をしたことをきっかけに漁業や生産者とつながり、2019年からは「魚食」の魅力を伝える活動も行っています。

生産者とのつながりや、活動の背景、生活者として今の日本の魚食について思うことを聞いてみました。

育休中に「糀マイスター」認定、
市主催の創業スクールで活動を形に

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発酵料理家 コージーキッチン主宰の高木佐知子さん

平日は時計修理技能士としてフルタイム勤務をしながら、夫とともに年の差三姉妹の子育てに奔走する高木さん。

三女の育休中の2016年に、「時短で体にいいものを作れるようになりたい」と思い、日本糀文化協会認定の糀マイスター講座を受講しました。

また、同時期に流山市が主催する創業スクールにも参加。

そこで自分がやってみたいことを企画・プレゼンテーションしたことをきっかけに、「糀マイスター」を活かしたイベント出展やレシピ開発など、活動が少しずつ本格化していったそうです。

初めての講師依頼はまさかの「JF全国女性連フレッシュ・ミズ部会」!
漁業にかかわる同世代の女性たちとの出会い

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第2回JF全国女性連フレッシュ・ミズ部会(2017年11月)
(写真:JF全漁連)

そんな高木さんに、漁業との出会いが訪れたのは2017年。市が主催するイベントでたまたまで出会ったJF全漁連の職員から、「漁村女性向けに講座をやってもらえないか」と依頼されたのです。

「もともと発酵と魚は相性が良いと思っていましたが、まさかのオファーでした!」と、高木さんは当時の驚きと戸惑いを語ります。実は、本格的に講座を企画し人前で糀について教えるのはこれが初めてだったそうです。

JF全漁連が開催するフレッシュ・ミズ部会は、漁協女性部の若手世代を対象とした次世代を育成する部会。高木さんと同じ子育て世代が多く、方々にアンテナを張った積極的なメンバーが参加しました。「講座中は私も緊張していてあまり覚えていませんが(笑)、懇親会では皆さんのパワーに圧倒されました!」と、高木さんは当時を振り返ります。その後も、SNSでつながって、フレッシュ・ミズ部会メンバーの皆さんの活躍をチェックしたり、フレッシュ・ミズ部会のメンバーが所属するうみひとネット (https://umihito.net/) のセミナーやシンポジウムにも参加したりし、交流を続けています。

ますます「魚食」に興味を持った高木さんは、このほかにも鹿児島大学水産学部の先生や、漁師などが首都圏で開催するイベントにも積極的に参加するなど、さらに生産地・生産者とのネットワークを広げていったそうです。

漁村の加工品に感動
「体に優しい」「環境に配慮した」「食べやすい」工夫が満載

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うみひとネットオンラインミーティング
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うみひとネットオンラインミーティングの「勝手に試食品評会」では、参加者に生産者からの試食品が届きます

生産者や産地とのつながりの中で、高木さんが感激したのが、漁村女性グループや漁業協同組合の加工品のクオリティの高さです。高木さんは、うみひとネットのオンラインミーティングで不定期開催される「勝手に試食品評会」にも参加し、実際に加工・販売を行う漁村の皆さんと意見交換も行っています。特に漁村女性グループの加工品は化学調味料無添加のものが多く、食卓に取り入れやすいと感じたそうです。「さらっと発酵食品を使っていたりする。食べやすさや味も追及していてすごい!」と高評価。さらに、プラスティック製パッケージのリサイクルや削減にも取り組んでいて、生活者としてもうれしいことばかりだそうです。

また、さまざまな地域の生産者の方と出会ったことで、スーパーマーケットの鮮魚コーナーなどで魚を買うときに表示を気にするようになったそうです。
「漁法とか、産地とか、知っている人の顔を思い浮かべるようになりました」。

発酵の力で、「魚食が気になっている人」の背中を押す

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ぱぱの糀横丁~糀の力で簡単つまみ作り~旬の魚でカンパイ!(2019年9月)
(写真:JF全漁連)

高木さんは、2020年から2021年までの2年間、JF全漁連のウェブメディアで、魚料理のレシピや食育に関するコラムを連載してきました。発酵の力を借りて、魚介類の臭みを消したり、短時間でうまみを引き出したりと、時短で簡単にできる高木さんのレシピは大人気で、「私でも作れそう!」「作ってみました!」というコメントが多数寄せられました。

2019年に開催した父親と子どもを対象にした魚料理教室は、なんと、募集開始後すぐに満員御礼。切り身を買って、「切るだけ・和えるだけ・焼くだけ」など、魚料理のハードルを下げつつ、おいしく食べられる工夫を伝えたところ、大変好評だったそうです。高木さんは、読者や参加者の反応を見て、「魚はなかなか手を出せないけど、実はみんな気になっている。調理法や扱いがわかれば取り入れたいという人が多い」と感じているそうです。

生産者に感謝し、もっと豊かな魚食へ

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千葉県産瞬〆スズキのカルパッチョを持つ高木佐知子さん
(写真:JF全漁連)

高木さんは、生産者の方たちと交流する中で、海での仕事は体力と自然との闘いであり、海藻類や養殖も手間がかかっていることを知ったそうです。「そんな人たちがいるから魚が食べられている。そういう背景をもっともっと消費者が知るとよいのでは」と考えるようになりました。

また、日本各地の産地では、バラエティー豊かな魚介類が水揚げされていることも知り、地元の人たちが食べているようなおいしい魚をもっと手軽に食べたいと思ったそうです。

「価格や処理の難しさなどの課題があると思うけど、生産者の人たちが『未利用魚』と呼ぶ魚を、私たちも利用できるようになりたいし、食べてみたい!」。高木さんは国産の水産物を無駄にしたくないという思いを強くします。「本当は町の魚屋さんがもっとあったらいいのに」と本音もぽろり。

また、引き続き、漁村女性の皆さんの加工品には注目していきたいと考えています。「やっぱり、安心して食べられる調味料で作った加工品がいい」と、化学調味料無添加で工夫を凝らした加工品に期待します。このほかにも、解凍して焼くだけの切り身や干物も使い勝手が良く積極的に取り入れていきたいそうです。

魚を食べる消費者として、そして魚食を伝える伝道師として、「魚料理は面倒」という印象を打ち破りたいと語る高木さん。家庭での「魚料理」のハードルを下げるため、今日もしなやかに活動中です。

高木佐知子さんが運営するSNS
Cozy Kitchen〜醸す台所〜


Instagram
https://www.instagram.com/cozykitchen_jp/
Facebook
https://www.facebook.com/cozykitchen.jp/

一般社団法人うみ・ひと・くらしネットワーク
(うみひとネット)


ウェブサイト
https://umihito.net/

JF全漁連公式ウェブメディア「Sakanadia」
高木佐知子さんのコラム


ウェブサイト
https://sakanadia.jp/writer/takagi_sachiko/

取材・文

久保奈都子(くぼ なつこ)

ライター。福島県出身。実家は福島県いわき市で沿岸漁業を営んでおり、幼いころから漁業と漁師に親しんできた。東京海洋大学卒業後、2013年4月から全国漁業協同組合連合会漁政部で水産政策や漁業担い手育成、資源管理などに関する業務に従事。2019年7月から2022年4月まで同総合管理部広報担当で、オウンドメディアの立ち上げやメディアリレーション強化等に携わる。
これまで出会った大好きな漁師さん、漁業関係者の皆さん、漁業を応援する皆さんの活躍を発信していきます!

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