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vol.12
2020.11.9

大分県佐伯市の伝統調味料 “ごまだし”料理研究家 園田 寿さん

大分県佐伯市鶴見漁港に水揚げされる水産物の多くが巻き網漁で獲れる魚。

とりわけ鯵、鯖、鰯の漁獲高は東九州随一。その鶴見において、巻き網漁師の妻たちが活躍する “漁村女性グループめばる” の小さな工場があります。佐伯市の伝統調味料 “ごまだし” の製造加工を担うのは地元の元気なおばちゃんたちです。

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漁村女性グループめばる代表・桑原政子さん

“ごまだし” って?

“ごまだし” は、もともとは漁師町が生んだ漁師のための伝統調味料です。昔は余った魚を焼いてほぐし、ごまや醤油などを加えて炊き上げていました。豊富な漁獲が生んだ、もったいない精神の調味料でもあります。

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漁村女性グループめばるが作る、佐伯市の伝統調味料 “ごまだし”

伝統的な食べ方は、茹でたうどんにごまだしをのせ、お湯を注ぐだけ!忙しい漁師が簡単にすぐにご飯を食べられるよう、生み出された究極のファストフードです。ササッと使え、ごまや魚の栄養もたっぷり、シンプルな味だけに魚の旨味と美味しさが際立つ、伝統調味料なのです。

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大分県佐伯市鶴見のソウルフード “ごまだしうどん”

漁村女性グループめばるが作るごまだしは4種類。材料の魚の種類で、鯵、エソ、鯛、シイラがあります。作業はその日仕入れた魚で決まります。

取材したこの日は、市場で仕入れたばかりの大きな60cm超えの新鮮な鯛。まずは豪快に頭をおとし、鮮度を落とさないうちに高温のオーブンで一気に焼き上げます。

ここから先はおばちゃんたちの地道な手作業。身をほぐしながら骨を取り除きます。機械ではできないこの作業はおばちゃんたちの目が命。ミンチにする際に大きな骨が入ると口当たりが悪くなるので、細心の注意を払います。

ほぐしてミンチにかけた身を鍋に入れ、熱を加えながら撹拌し、醤油、みりん、きび砂糖、ごまを加え、材料となる魚の状態をみて調整をしながら炊き上げます。

出来上がったらビン詰めをして、ここからは元漁師の出番!ごまだしのパッケージデザインに欠かせない、蓋の綱を結んでいきます。

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漁村女性グループめばるは地元で水揚げされる魚を使った加工品を製造・販売している

“漁村女性グループめばる” の由来

過疎化と高齢化の進んだ田舎町で、引退した漁師やその妻たちの雇用を担う漁村女性グループめばる。

グループ名である“めばる” の由来は?ときくと、「めばるって魚はお目目がパッチリでウエストがきゅっとしまってて、胸がふっくらしてて私たちみたいでしょう!」と。想像は皆様にお任せしますが、そんな元気な発言のおばちゃんたちが作るものが美味しくないはずがない!

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漁村女性グループめばるはメンバー全員仲良し!楽しく作業しています

全国調味料選手権で最優秀賞受賞!

うどんにのせてすぐ食べられるという地元では有名な調味料でしたが、めばるは目が大きいだけに着目したところが違う!

万能調味料として、2017年全国調味料選手権に応募したところ、有名シェフや調味料ソムリエの目に留まり最優秀賞に。この賞をきっかけに、ごまだしをいろいろアレンジして家庭で楽しんでもらえるよう「海の恵み佐伯ごまだしレシピ」(出版社:株式会社講談社エディトリアル)というレシピ本も出版しました。

今回はその中のおすすめレシピを紹介します。

ごまだし焼きおにぎり

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作り方

  • 温かいご飯にごまだしを混ぜ、(1杯分に対し大さじ1程度)おにぎりにする。
  • ごま油を熱したフライパンで両面を焼く。
  • 表面にごまだしを小さじ1程度塗ってから裏返すと、とても香ばしく、お好みで大葉や小ネギを混ぜてもお勧め。

ごまだし豆乳茶漬け

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作り方

  • 温かいご飯を器に入れ、ごまだし大さじ1、小ネギ、梅干しをのせる。
  • 最後に温めた豆乳を注ぐ。

まろやかな豆乳にごまだしのうまみが加わることで、食欲のないときでもさらりと栄養いっぱいのご飯が食べられます。
梅干し以外にも塩昆布や鮭フレーク、イクラなどをのせるのもお勧めです。

ごまだしのせ冷奴

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その名の通り、豆腐にごまだしのみ!
醤油の代わりにごまだしをかけてお召し上がりください。
焼きナスや茹でたほうれん草などにもごまだしをのせるだけで、美味しいだけでなく栄養もとれる副菜になります。

ヤンソンさんの誘惑風

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材料(1〜2人分)

ごまだし大さじ2
ジャガイモ2個
にんにく1かけ
玉ねぎ1/2個
バター10g
生クリーム200cc
塩、胡椒、パン粉適宜

作り方

  • ジャガイモ、にんにく、玉ねぎを薄くスライスする。
  • フライパンにバターを熱し、にんにくと玉ねぎをしんなりするまで炒め、塩胡椒を振って冷ましておく。
  • 耐熱皿に、ジャガイモ、、ごまだしの順に半量ずつ重ね、それをもう一度繰り返し、生クリームをひたひたになるまで加え、パン粉を振り、200度に温めておいたオーブンで30分ほど焼く。

スウェーデンの家庭料理ヤンソンさんの誘惑をごまだしでアレンジ。ごまだしはアンチョビの代わりに使え、いろいろと応用ができます。

ごまだしバーニャカウダ

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材料(1〜2人分)

ごまだし大さじ2
にんにく1かけ
オリーブオイル大さじ2
生クリーム200cc
好みの野菜等
・ ブロッコリー
・ ミニトマト
・ パプリカ
・ 焼きさつま芋
・ 焼きかぼちゃ
・ 茹でエビ
  など
適宜

作り方

  • にんにくはみじん切りに。フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけ、香りが出たらごまだしを炒める。
  • ごまだしの香りがたったら、生クリームを加えひと煮立ちさせる。

お好みの野菜に浸けながらいただきます。
バゲットに浸けたり、パスタに和えるのもお勧めです。冷めるとぽてっとしたディップ風になるので、それも具材が絡みやすくてお勧めです。

魚とごまと醤油。シンプルな材料であるからこそ、万能に和洋中エスニックと様々な料理に使えるごまだし。全国の各家庭の定番調味料として、いつも冷蔵庫の中にある存在でありたいと思う “漁村女性グループめばる” です。

漁村女性グループめばる


住所
大分県佐伯市鶴見大字沖松浦1384番地2
電話
0972-33-0274
E-mail
abcmatyako abcsaiki.tv

文・レシピ

園田 寿

園田 寿(そのだ すが)

料理研究家
結婚・出産を機に料理に目覚め、子供の野菜嫌いをなんとかしようと考えだした、アイデアと旬の食材を生かしたレシピが数々の料理コンテストで表彰されるように。現在は大分県大分市内で料理教室「シュガーズキッチン」を主宰し、地元の野菜農家とコラボした野菜教室や、食育の一環として魚料理教室、郷土料理教室なども行っています。和洋中エスニックと幅広いオリジナルのレシピは、手に入りやすい食材で家庭向きにアレンジしており、ご家庭でもさっと作れるのが魅力です。

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